墓場と新語から読む中国のバブル経済
高度経済成長が続く中国。その牽引車である不動産はバブル化が激しく、マイホームは庶民にとって遠い世界の存在となった。ところが、バブル経済の中、女性側が男性側に結婚の条件として不動産を要求する風潮が生まれ、ローン地獄に陥る庶民が激増、民の怨嗟の声を受け、ついに中国版の総量規制が発動された。
それからというもの、主戦場を失った投機資金が宝飾品や美術品から果ては農産物市場まで、投機の題材になりそうなものを次々と荒らし回り、さまざまな社会現象を起こしている。そのひとつがここで紹介する墓場バブルである。
中国人に「死ぬに死ねない」と言わしめる墓場のバブル事情を新語を通して読んでみたい。
目次
现墓
すぐに使用できる墓のこと。不動産の“现房”に相当。北京などでは公営霊園の“现墓”はすでに満杯で、カネを積んでも買えない状態になっている。
期墓
建設中の墓。「入居」可まで数年待ちとなる。不動産の“期房”に相当。“现墓”の供給逼迫を受け、暴騰している。
小产权墓
“小产权”とは中国特有の経済用語で、国家公認ではなく、地方政府(一般的に大都市郊外の農村の役場)が公認する土地使用権である。国家公認の“大产权”に比べ土地使用権の部分が大幅に安いため、バブル経済の中で高騰した不動産市場において、庶民にも手が届くマイホームとして人気を集めている。
本来、農村部の土地使用権をその土地の農民以外に売り出すことは違法であり、中央政府は“小产权房”の「対外販売」を禁止しているのだが、なぜか公然と売られている。
中央政府が「口先介入」を続けるうちに“小产权房”所有者数が増えてしまい、今や手を出すに出せない存在となっている。中国のことわざ「上に政策あれば下に対策あり」を地でゆく象徴的な存在である。
“小产权墓”はこの“小产权房”の墓場版である。歴史は繰り返すのであろうか。
- 語彙参照
- 产权
祭不起
(費用がかかりすぎて)先祖を祭るることができないことをいう新語。インフレの煽りを受け、墓参り用品が高騰していることを風刺していう。
坟奴/墓奴
高額の墓地購入負担に苦しむ人。