窑奴
解説と補足
これまで紹介してきた“奴”はインフレや社会制度に起因する、広義における、というか、冗談交じりの「奴隷」であるが、“窑奴”は本来の奴隷に近い存在である。
中国は発電や暖房のエネルギー源として、国内に豊富に存在する石炭に頼っている。一方で炭鉱は小規模経営のところも多く、悲惨な就労環境にあるところも少なくない。
最も顕著なのが炭鉱事故死亡者数である。世界の炭鉱事故死亡者数に占める中国の割合は圧倒的である。これは企業が安全対策にかけるカネをケチることに起因する。安全対策にカネをかけるよりも、役人を買収した方が安上がりなのだ。
あまりにも頻発する炭鉱事故のため世論の不満が高まったことを受けて中央政府はさまざまな対策を立てているが、実際に監督する立場にある地方政府としては労働者の命よりもカネ(税収及び袖の下)の方が重要なので、根本的な解決には程遠い状態にある。
安全対策規制の中には、企業幹部も労働者といっしょに炭鉱に入れ、などというネタのようなものもある。まぁこれも現場としては別枠でなんちゃって企業幹部を用意すればいいだけの話で終わってしまうのだが。
また、数は少ないと思われるが、中には本当に奴隷労働を強いているケースもある。人身の自由を制限し、最低限の食事で、風呂などもなく、休みなしで労働を強いるようなものだ。
この他、少年工や知的障害者を苦役させるようなケースも散見される。原始的な資本主義そのままの世界が共産主義国家で繰り広げられているのは正に皮肉としか言いようがない。