上班奴
解説と補足
「社畜」というと日本特有のものと考えられがちだが、実はお隣の大国・中国にも存在する。それが“上班奴”である。
かつて計画経済の下にあった中国では、いわゆる会社員は基本的に社畜であった。職はすべて国家から割り当てられるものだったからだ。その後市場経済化が進み、転職や起業が一般的なものになる。改革開放初期、国営企業の待遇は非常に低かったので、チャンスがあればみな外に飛び出したのだ。
そして改革開放から30年を経た現在、かつての民高公低は完全にひっくり返り、大手国有企業が就職人気企業の上位を独占するようになった。何せ金融機関や電気ガスなどのエネルギー系企業などの公共性の強い企業、または通信などの半独占状態にある大企業は収入、福利とも一般の民間企業に比べ圧倒的に充実しているからだ。現在では会社の中で培ったコネを元手に起業するような場合を除き、このような起業から転職することはほとんどなくなっている。
雇用流動性が低くなると所属する企業への依存が強まるのは別に日本人に限ったことではない。このようにして、欧米型の雇用慣行と言われる中国でも社畜現象が発生するのだ。また、近年はホワイトカラーの人余り現象が起きており、社畜現象が一般の優良企業にも広がりつつある。“上班奴”という概念が生まれたのもこのためかもしれない。
なかなか分かり合えない日本人と中国人だが、同じ社畜同士なら話が通じるかもしれない。中国語を覚えて中国の社畜たちと交流するのも一興ではないだろうか。