卡奴
解説と補足
社会保障制度が貧弱で、いざというときのために預金を積み上げる風潮が強かったのだが、物質的に豊かな中で生まれ育ち、高度経済成長の真っ只中で自ら所得を得るようになった改革開放世代である一人っ子世代は消費意欲が強い。そんな彼らの消費意欲を近年急速に普及しているクレジットカードが刺激している。結果として生まれたのが“卡奴”現象である。
“卡奴”とは“房奴”に始まる「中国新奴隷時代」の新種である。カードローンによる先行消費、キャッシングし過ぎて負債を積み上げる人のことをいう。
“卡奴”現象に拍車をかけているのがカード発行元である銀行の顧客囲い込み競争である。元々融通が利く(いい加減ともいう)民族性なのだが、競争激化のためクレジットカードの審査もいい加減なもので、本来基準に満たない者でも容易に取得できてしまうのだ。
よくあるのがA社のクレジットカードの負債を新たに取得したB社のクレジットカードのキャッシングを利用して返済し、B社の負債を更に新規取得したC社のキャッシングで返済する……という自転車操業式の返済で利息が積み上がり、返済不能となるケースである。
中国は自己破産制度の整備が遅れており、最終的には銀行に訴えられ、クレジットカード詐欺罪で有罪判決を下されるケースが続出している。もっとも、自己破産制度を整備したら、今度はそれを悪用しようとする者が続出することを容易に想像できてしまうのだが……