蚁族

中国語新語

蚁族(yǐ zú

日本語訳

アリ族(※解説参照)

解説と補足

日本人の感覚では、アリのイメージは『アリとキリギリス』の童話から連想されるような「勤勉」になるかもしれない。その意味では中国の“蚁族”も確かに勤勉であるが、彼らがアリと形容されるのは、勤勉であることにとどまらない。

アリの特徴は「高知能」(昆虫類の中で最も賢い部類に入るらしい)、「弱小」(単独では非常に弱い)、「集団生活」であるが、中国の“蚁族”たちも見事なまでにこのような特徴を備えている。

まずは「高知能」。“蚁族”は一般的に大卒である。職種も一応“白领”に分類されるホワイトカラーが主体である。

「弱小」は、コネなどを持たない、ごく普通の一般大衆であることを意味する。中国が絶対的なコネ社会であることは、少しでも中国を知るものならば常識と言って良いだろう。

そして「集団生活」。これが“蚁族”と呼ばれる最たる理由かもしれない。北京や上海などの大都市部では不動産価格が高騰しているのはよく知られているが、賃貸価格もそれにつられて高騰しており、大学を出たばかりの若者にとってはかなり厳しい価格帯に到達している。

特に大学生の急増から大卒の就職需給が悪化しており、初任給は下落の傾向を見せているほどである。加えて中国では業種間、職種間の収入格差が日本のそれよりはるかに大きく、同じ大学卒の初任給でも、数倍の格差が生じることも珍しくはない。

そんな中で、薄給層は安価な賃貸物件を求めて、郊外へ、郊外へと向かう。また、少しでも住居費を抑えるため、いわゆるルームシェアを行う。だから「集団生活」なのだ。

職場から遠く離れた郊外で集団生活し、毎日数時間かけて通勤するその姿を、黙々と食物を巣へ運び込むアリに重ねた、痛々しい表現であるが、それ故に、社会の注目を集めることとなった。これが彼らの境遇を改善する契機になれば良いのだが。

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Time:
2009-11-16 Last modified: 2014-01-07