銭荒
解説と補足
“荒”は「凶作」を意味する”饥荒“の”荒“で、深刻な欠乏状態にあることを意味する。“銭荒”は文字通り「金が極度に足りない」という意味で、いわゆる流動性逼迫のことである。
実は、2013年7月に経済危機が発生するという内部報告が存在するのだが、6月に入って銀行間取引金利が急騰し、この「予言」が現実味を帯び始めているのだ。
経済危機の仕組みについてはここでは深入りしない。簡単にまとめれば、2008年のリーマン・ショックのときに投入した4兆元もの資金が償還期を迎えているのだが、ゴーストタウンならぬゴースト・シティーとも揶揄される、住民のいない都市の建設に代表されるような野放図な投資が横行したため、返済の見込みがないものが多いのだ。
加えてアメリカが量的緩和の縮小に動き始めたため、“热钱”と呼ばれるホットマネーが一気に引き上げてしまったのも事態を深刻なものにした。
危機が表面化した6月23日には、中国四大国有銀行の一つである中国工商銀行のATMが絶妙のタイミングで故障、預金が引き出せなくなり、取り付け騒ぎを防ぐための人為的なものでは、と噂されるような香ばしい事態も発生している。
これまでの政府ならばさっさと資金を注入していたものだが、政権交代したばかりの新政権は銀行の救済要請をにべもなく突き放している。マネーゲームにうつつを抜かす「影子銀行」と呼ばれるシャドーバンキング潰しを意図しているとも言われるが、これまで通り資金を注入しても、いずれは危機は発生するものなのだから、どうせ発生するならば責任を前政権に押し付けることができる、政権交代したばかりの今の方が良いと現政権が判断しているという分析もある。
その実はどうなのだろうか。いずれの分析ももっともらしい。いずれの分析も正しいのかもしれないが、また別の理由が存在するのかもしれない。いずれにせよ、わたしにはよくわからない。経済や政治の分析はそれを専門とする人に任せたい。
中国語という視点から言えば、是非覚えておきたいのが“~荒”で構成される新語のパターンである。繰り返しになるが、”荒“は深刻な欠乏状態にあることを意味する言葉で、何かと応用が利く。 不足するものが電気ならば“电荒”、天然ガスならば“气荒”、労働者ならば“用工荒”といえば良い。便利なので今後もいろいろな”荒“が生まれるだろう。