李克强经济学

中国語新語

李克强经济学(lǐkèqiáng jīngjìxué

日本語訳

リコノミクス(※解説参照)

解説と補足

“李克强”は言わずと知れた……かどうかは少し微妙だが、少なくとも中国語を学ぶ者ならば誰しも知る(であろう)中国の新首相……正確には新総理こと李克强である。

本テーマとは直接関係はないことなのだが、中国には「首相」というポスト名は存在しない。正式には「国務院総理」である。実質的には「首相」に相当するので、日本では「首相」として紹介されるが、中国語ではあくまで“総理”であり、“李首相”と言ってはいけない。“首相”はあくまで外国の政治ポスト名なのだ。

それはさておき、先週紹介した“銭荒”を引き起こす直接的な原因がこの“李克强经济学”である。中国語の新語としては響きの悪いこの表現、先に発足した日本の安倍新政権による“安倍经济学”に触発されて生まれたものだ。

「エコノミクス」の中国語が“经济学”だから、「アベノミクス」は“安倍经济学”と訳される。同じく「レーガノミクス」は“里根经济学”。ここから、中国の新政権が推し進める経済政策も“李克强经济学”と称されるようになった訳だ。

生みの親はイギリスのバークレイズ銀行の投資部門。英語では“Likonomics”という。これを中国語に訳したものが“李克强经济学”である。中国語の新語としてスマートでないのは外来種であるためであろう。

“李克强经济学”の概要については経済の話になるので深入りはしない。“銭荒”の項でも多少触れたが、一言で言えば引き締め政策の継続である。これまでのように事あるごとにジャブジャブと資金供給はしない、という政策方針だ。

「アベノミクス」はその土台となる「エコノミクス」の中に、格助詞「の」と同音になる“no”が都合の良いポジションで存在しているため響きが良く、日本語の造語としてはクリーンヒットといって良い表現だが、あいにくのところ中国語ではこの語感を再現できない。

結果として「アベノミクス」は「レーガノミクス」を踏襲した“安倍经济学”というぶっきらぼうな訳となり、それがそのまま“李克强经济学”にも反映されてしまった。中国語の新語を追う者としてはまことに残念な表現となっている。

発音をもじって作られた外来新語の訳はその語感を伝えるのが難しいものだが、インターネットが普及した今、衆知によって中国語の語感に沿った造語が生まれるかもしれない。中国人の機知とユーモアに期待したい。

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Time:
2013-07-05 Last modified: 2013-11-05