考碗族

中国語新語

考碗族(kǎo wǎn zú

日本語訳

公務員試験を受ける者(※解説参照)

単語

解説と補足

“博士后”(ポスドク)に倣った“硕士后”“学士后”という制度まで提案されるほど深刻な状態にある中国新卒就職戦線。となれば公務員が人気になるのは中国も同じ。そもそも中国は日本をはるかに凌ぐ役人天国。失業の心配がないのみならず、福利厚生がすごぶる充実していて、官民を問わず人脈形成にも有利となれば、公務員試験に学生が殺到するのも無理はない。

“考碗”はこの公務員試験の俗称である。“考碗族”は“考碗”する人の総称。すでに一つの社会現象とまで昇華している。

“考碗”の“碗”は“饭碗”をさす。この“饭碗”は茶碗ではなく、飯のタネ、いわゆる働き口を喩える言葉である。80年代から90年代にかけて中国語を学んだ者ならば、“铁饭碗”という語彙は印象深いのではないだろうか。食いはぐれのない安定した職、公務員とか国営企業の働き口をさす言葉である。少し古い表現だが、いわゆる「親方日の丸」みたいなものだろうか。

今や歴史を感じさせるこの言葉が、近年の新語ブームによって再度注目を浴びている。”鉄”から金属関連でオリンピックのメダルにつながり、公務員や国営企業の職をメダルの色でランク付けしたのだ。

例えば、“金饭碗”は中央レベルの国家公務員、“银饭碗”は省・直轄市レベル、“铜饭碗”は区・市・県レベル、“铁饭碗”は郷・鎮レベル、という感じでランク付けされる。分け方は厳密ではなく、省級以上を“金”とすることもある。また、公務員を“金饭碗”、公団・国営企業を“银饭碗”としたり、国営銀行の銀行員を“银饭碗”とするなど、バージョンはいろいろあるようだ。

もっとも、公務員ならなんでも良いのか、というとそういうわけではなく、経済的に豊かな地域・部門とそうでない地域・部門のそれとでは雲泥の差がある。格差社会・中国の「格差」は複合的で、同じ公務員の中でも、地域・部門によって数倍から十数倍の格差が存在するのだ。

このため、公務員でも応募者ゼロというポストも存在する。一方で数千倍の倍率となる人気部門も存在しているのだが。

いずれにせよ、公務員試験は、既に大学入試試験を超える超難関試験になっている。そうなれば大量の不合格者が存在することになるのだが、そのような者をさして“国考炮灰”というようだ。“国考”は国家公務員試験のこと。“炮灰”は砲弾爆発後に残る灰燼のことで、そこから無理やりに戦場に送られた兵士を喩えたものだが、それを公務員受験戦争に敗れ去った無数の受験者になぞらえた新語である。

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