减负令

中国語新語

减负令(jiǎn fù lìng

日本語訳

ゆとり教育令(※解説参照)

単語

解説と補足

かつて日本で言われていたことが、21世紀の中国で繰り返されている。詰め込み教育のため勉強漬けにされる子どもが可哀想だ、ゆとりを与えろ、という、かの「ゆとり教育」である。

この20年の間、日本がゆとり教育に舵を切った一方で、中国は詰め込みに詰め込みを重ねる成績競争の道をひた進んできた。子どもたちはすべて学業成績で評価され、学級委員などもすべて成績の良い者が担当し、果ては交友関係も子どもたちが自発的に!成績の良し悪しでまとまってしまうという、当時の日本もビックリの成績至上主義が蔓延しているのだ。

勉強はできるものの、自立能力があまりにも欠けるところから、現状の教育に対する批判の声も日増しに高まっている。もっとも、現実にはその声に反比例するかのごとく、成績競争は過熱化する一方であったのだが。

政府も現状の教育に危機感を抱いているようで、近年は過剰な競争を沈静化させるべく対策を小出しに打ち出してきたが、その効果は全くと言っていいほどゼロだった。

これを受けて、この度政府は8月に広範囲に及ぶ本格的な対策を打ち出してきた。これが中国版「ゆとり教育令」こと“减负令”である。小学校向けのものだが、その内容をザラッと箇条書きにすると、次のようになる。

  1. 学区制を徹底すること。
  2. 特進クラスを設けないこと。
  3. 進度は教育綱領に基づくこと。
  4. 宿題は出さないこと。体験型の社会学習を行うこと。
  5. 1年生から3年生は全校統一試験は実施しないこと。4年生以降も一学期に一度のみ。学科毎の試験は一学期に2回まで。
  6. 評価は「優」「良」「合格」「合格待ち」という等級分けにし、励ましの言葉を添えること。点数制は廃止すること。
  7. 補助教材は一科目一つまで。保護者の意思に任せること。学校と教師による補助教材の推薦、販売を禁ずる。
  8. 学校と教師は放課後及び長期休暇、休日に補習を行ってはならない。公立学校と教師は、学外の補習授業を行ったり、参加してはならない。
  9. 毎日1時間の運動時間を確保する。

要は、現状では小学校からこの法令が禁ずる行為が横行している訳である。公立校であるにも関わらず、優良校への学区外から入校も成績とカネ次第でOK。優良校になると一学年以上先の内容を教え、物理的に不可能ではと思われる量の宿題を出す。大量の補助教材を購入させ、カバンは教材で満杯。教師は課外授業に精を出して収入を超えるほどの副収入を手に入れる……。これが日本のゆとり教育批判者が称える学業成績優秀国・中国の実態なのだ。

中国でゆとり教育が支持を集めるのはこのような現状を反映してのことである。もっとも、お上がいくら通達を出しても、中国の教育パパママたちの学業成績至上主義は変わるべくもなく、また、銭ゲバと化している学校関係者たちが、成績という金の成る木をたやすく放棄するとは考えられないので、毎度のごとく「上に政策あれば下に対策あり」の神通力によって、実質的には何も変わらないのではないのか、とわたしは予想している。

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Time:
2013-09-27