嫁房女
解説と補足
“房”(マイホーム)を所有している男以外お断りな女のことである。中国ではここ10年近く不動産が男性側が準備すべき結婚の条件とされるようになったが、その一方で不動産価格が高騰、近年は一般的な結婚適齢期の男性の収入では手の届かない水準に達している。
一方で不動産が標準的な労働者の収入とはかけ離れた価格帯にあるため、男性の経済力を測る基準として、不動産を重視する傾向が強まっている。“嫁房女”はこの典型例で、男性の勤務先の良し悪しよりも、不動産の有無を重視するのだ。
日本人の感覚では優良企業に勤めている方が経済的に優位にあるように感じるが、中国ではそうとは限らない。
近年、特に大都市では都市部の急速な拡張による土地開発で、大量の土地成金が生まれている。本人は無職でも、その両親は補償金で財産を築き、複数の不動産を所有しているようなケースも少なくない。おまけに現在の制度では、固定資産税や相続税は存在しないので、財産が目減りすることもないのだ。
こうなると、優良企業に勤める不動産不所有の男性より、無職でも不動産、特に複数の不動産もしくは高額不動産を所有している男性の方が経済競争力が高いことになる。これが不動産を結婚の絶対条件とする女性を生む背景である。彼女たちは、経済合理性に忠実に基づいて判断しているのだ。
もちろん、これは純粋な愛情を理想とする純愛主義と衝突する。また不動産を所有しない男性にとっても都合の悪い存在であり、社会的には建前としては否定的に捉えられているが、 現在のところは経済的に理に適った選択であるため、経済環境が変化しない限り”嫁房女”が消滅することはないであろう。