河蟹
解説と補足
“河蟹”は“和谐”の“谐音”(発音が同じか近いこと)である。“和谐”は“和谐社会”(和諧社会・調和のとれた社会のこと)として打ち出されたスローガンを指し、格差の拡大が進み、内部対立が先鋭化している近年の中国社会が目指すべき姿を表した宣伝用語である。
この“和谐”が、いつの間にかネット上で、検閲を意味する言葉となっている。「“和谐”された」で「検閲された」たという意味になるのだ。
要は、“和谐”のために、政府にとって都合の悪い情報が検閲削除された、ということなのですが、これがネットに氾濫したため、“和谐”という言葉自体が検閲されることに。
ならば、と“和谐”と同音になる“河蟹”(河川に生息するカニ)が“和谐”に置き換えて使われるようになったのが、ここで紹介する“河蟹”の由来である。
もっとも、“河蟹”が選ばれたのは、単に発音が同じというだけではありません。カニは横歩きする。ここから“横行”と解く。“横行”ときたら“霸道”となるのが中国語である。そう、“横行霸道”(権勢をたのんで横暴な振る舞いをすること)である。“河蟹”は政府による“横行霸道”を風刺する表現になるのだ。
ちなみに、“河蟹”のイラストには腕時計が三つつけられていることがあるが、これは江沢民の《三个代表》(三つの代表)を暗喩している。“三个带表”(“表”は「時計」の意)である。つまるところ中国共産党を暗喩しているのだ。