北京咳

中国語新語

北京咳(běijīng ké

日本語訳

北京咳

解説と補足

昨冬北京で発生した深刻な大気汚染が大々的に報じられてからというもの、日本でもPM2.5という言葉が広く知られるようになっているが、“北京咳”はこの大気汚染を原因とする呼吸器疾患をいうものだ。

言葉自体は新しいものではなく、初出は1990年にまで遡る。国際ロータリーの機関誌「The Rotarian」で“Beijing Cough”として紹介されたのが始まりで、後にアメリカの旅行ガイドに取り上げられたのを機に、北京を訪れる外国人の間でよく使われるようになった。

“北京咳”はこの“Beijing Cough”の中国語訳である。当初は真の当事者たる中国人には認知されていなかったが、昨冬の重度スモッグを契機に、メディアで大きく取り上げられるようになった。

一方、中国の大気汚染は北京に限った話ではなく、北京より深刻な地域も存在する。今年も既に北から南まで広範囲で深刻なスモッグが発生しており、大気汚染を原因とする呼吸器疾患は北京に限った話ではない、“北京咳”という表現は北京を侮辱するものだ、という声もあるが、“北京咳”の言葉の由来を考えれば、国際都市であり、首都である北京の有名税みたいなものではないだろうか。“中国咳”ならば北京にとっては平等かもしれないが、今度は中国に対する侮辱である、という非難の声が「愛国者」たちから聞こえてきそうである。

ちなみにだが、既に“中国空气病”という表現も生まれている。スモッグが中国の広範囲に広がっていること、スモッグの影響は呼吸器系にとどまらないこと考えると、こちらの名称の方が正確ではなるが、あまりスマートではないのが残念なところだ。

いずれにせよ、“Beijing Cough”は“Delhi Belly”(デリー腹:西洋人がインドなどの東洋諸国を訪れた際に下痢をすること)と並ぶ、不名誉な中国の代名詞となってしまった。スモッグの中でチャイニーズドリームと叫んでもブラックジョークにしかならない。1日も早い名誉挽回を期待したい。

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Time:
2013-12-13 Last modified: 2013-12-13