ジャッキー・チェンの言論にみるニュースの偏向性とジャッキーの苦悩 おまけでチャン・ツィイー

同じ出来事を伝えるニュースでも、その伝え方で読み手の印象が180度変わってくる典型例がこの二つの記事。

 【香港14日時事】香港の俳優ジャッキー・チェン氏は14日までに米CNNテレビとのインタビューに応じ、中国の人権問題などを批判して北京五輪に反対するのは「公平ではない」と語った。チェン氏は北京五輪の「イメージ大使」として、宣伝活動に参加している。  チェン氏は人権侵害、環境汚染などについて「世界的な問題であり、中国だけではない」と主張。中国も変化しているが、十数億もの人口を抱えており、「1日では変わらない」と述べ、対中批判に反論した。チベット問題に関しては「政治のことは分からない」として、詳しい言及を避けた。
 2008年4月11日、ハリウッド映画にも多数出演する世界的なアクションスター、ジャッキー・チェンが米のCNNの人気番組「トーク・アジア」に出演。北京市の「京華時報」が伝えた。  ニュース専門チャンネルCNNの「トーク・アジア」は、今アジアで話題の人物を香港のスタジオに招いて話を聞くというもの。今回の収録に招かれたジャッキーは北京五輪親善大使に任命されているため、現在世界各国から人権問題にからんで批判を浴びている北京五輪開催に関し、司会者から意見を求められる場面も。これに対しジャッキーは「オリンピックにとって大事なのはオリンピックの本質とスポーツ精神。政治を持ち込まず、北京五輪を支持してほしい」と答えた。  またチベット問題に関連して、世界各地で妨害行為が続いている聖火リレーについても話が及ぶと、「そこに問題があることを、僕らは知っている」と話し、「中国は近年大きく変わったと思うが、1日で変わることはできない。ゆっくり改善していくから」と語った。(翻訳・編集/本郷)

一方が時事通信が「14日までに米CNNテレビとのインタビューに応じ」で、Record Chinaが北京市の京華時報を引用して「米のCNNの人気番組「トーク・アジア」に出演」としているので、完全に同じものをニュースにしているのかどうかははっきりとしませんが、配信された時期がほぼ同じなので、時事通信の言うところの「米CNNテレビとのインタビュー」とは「トーク・アジア」でのインタビューだと思います。

で、同じものでも記者の書き方によってずいぶん印象が異なってきます。時事通信の記事ではジャッキー・チェンの中国寄りのスタンスが強調されていますが、Record Chinaが引用している京華時報では、ジャッキー・チェンが慎重に言葉を選びながら、中国側の問題を認めつつも五輪への支持を訴えている姿が読み取れます。

で、この二つの記事についているコメントです。一方はジャッキー批判、もう一方はジャッキーが同情を集めています。まさに180度対照的。

「京華時報なんて中国のメディアでしょ。信頼できない。」と言ってしまったらそれまでですが、改竄するのなら「そこに問題があることを、僕らは知っている」なんて歯の奥に物が挟まったような表現をさせるより、カッコ良く「西側は中国を誤解している。」とか言わせる方が、中国人ヒーロー「ジャッキー・チェン」らしいじゃないですか。

ジャッキー・チェンはもともと香港人ですし、アメリカでの活動も長いですから、民主主義や世界における主流意識がどのようなものなのかは承知していると思います。でも経済活動は中国と切って離せませんから、こんな言い方しかできないんでしょう。

そもそもリチャード・ギアとは立場がまったく異なるのです。ジャッキー・チェンに中国政府批判を期待するのは無茶な話だと思います。それができたら人権史にその名を残すことになるでしょう。「聖人」になるのはそんな簡単なことではないということで。

そんなジャッキーですが、中国内では民意に迎合してこんな発言を……

 北京オリンピックの聖火リレーに参加する予定の成龍(ジャッキー・チェン)さんは16日、「リレーを妨害するのは悪事を働くこしゃくな連中だ」と非難した。17日付で浙江在線が伝えた。  またジャッキーさんは「そんなことをする理由はないはず。きっとテレビに映りたいだけだ」と指摘。更に「私から聖火を奪い取ろうとした場合には、中国のカンフーがどんなに強いか思い知らせてやる。妨害を考えている人は私に近づかないほうがいい」と警告した。(編集担当:麻田雄二)

民度に合わせたのかなw。有名人は辛いですね。

ちなみにこちらはどうでもいいことなのですが……

チャン・ツィイー。最近ハリウッドで活躍している中国人女優。日本でもファンが多いですね。チャン・ツィイーは北京生まれの純中国人ですから、こういう発想になるのはフツーだと思います。

政治になんて興味はないんでしょうし。芸人なんですから。