中国の人口は13億?神のみぞ知るプラスα
人口大国・中国。中国に言及される場合はそれこそ枕詞のように総人口「13億」という数字が強調されます。
そこで問題です。中国の人口は本当に13億なのでしょうか?
中国国家統計局によると、2006年の人口は13億1448万人だそうです。端数(1448万人)を省けば13億ですね。1448万人が端数扱いになるのもある意味すごいですが。
問題はこの統計がどこまで正確なのか誰にもわからないところにあります。中国発のナンチャッテ統計の例を挙げればキリがありません。例えば各省のGDPの総計が中央政府のGDP統計を大幅に上回っていたり(地方高官が政治実績を水増しするためGDPも水増しする)、地方政府が人口一人当たりのGDP算出で非戸籍者を分母から除外したり(例えば広州市は2006年の統計で一人当たりのGDPが1万ドルを超えたと発表したが、分母となる人口総数に広州市の戸籍を有しない者を除外していた。中国では自由に戸籍を移転できないので、他の地方に戸籍のある人は実際に広州市に居住していてもカウントされない)、果ては二酸化炭素排出量を歴史割りしたり、軍事費を人口割りしたりなど、まさに数字のマジシャン。
まぁ、およそ途上国と呼ばれる国の統計は当てにならないことも中国の名誉のために付け加えておきます。
でも人口数はそうはいかないでしょ、と思いきや……これがまた奥が深いのです。
中国の人口統計があいまいになる最大の問題はかの有名な「一人っ子政策」と呼ばれる出産制限政策にあります。両親が一人っ子、農村部で第一子が女子などという条件を満たせば二人出産することも可能ですが、基本的には夫婦一組で子供一人と制限されています。
違反者には高額の罰金が科せられますが、それでも(特に農村部において)複数の子供を持つ家庭は少なくありません。なぜかって?男の子が必要だからです。
この話になると「農村部は男尊女卑だから」という論調に流れるパターンが多いようですが、農村部で男子を必要とするのはより現実的な理由があります。例えば、男の跡取りがいない家は近隣と対立が発生した場合劣勢に立たされることが多いのです。
中国は人治社会です。問題解決に際しても基本的に法律よりも人の要素の方が強い影響力を持ちます。おまけに歴史的に厳しい生存競争にさらされている社会でもあり、強弱関係が露骨に反映されるという社会的特徴を持ちます。このため、社会構造が比較的単純な農村部においては、社会的強者である成年男子がいない家庭はいじめられる傾向にあるのです。
さらに現実的な問題もあります。農村ですから力仕事が要求される農作業も少なくないことは言うまでもありませんが、力作業が必要になるのは何も農作業ばかりではありません。
農村部は上下水道が整備されていないところが大多数です。庭に井戸を掘れば水が出てくるような地域は良いのですが、水汲みのために何キロもの道のりを行き来しなければならないようなところも少なくありません。若いうちは良いでしょうが、齢六十七十という老人には酷な作業です。
女の子は嫁いだら実家の水汲みまで面倒をみることはできませんから、たとえ嫁いだ娘が定期的に実家に送金したり(※嫁いだら嫁ぎ先の一員となるのでこんなこと自体基本的にありえません。結納金で一括払いです。)、あるいは政府が年金を支給したりしたところで、水汲みのような生活上の問題は解決できないのです。
このような理由のため、辺鄙な農村に行けば行くほど跡取り息子が必要不可欠になります。罰金だろうが何だろうが、こればかりは譲れないのです。
このため、農村部では基本的に男の子が生まれるまで子作りを続けます。おまけに「一人っ子政策」初期の頃は小さかった罰金額が後に大幅に引き上げられたため、罰金を回避するため女の子が生まれても戸籍登録しないケースが少なくありません。
また、夫婦そろって出稼ぎに出ている場合、外地で出産されると当局側は事実上摘発できません。地方によっては「出稼ぎ女性は半年に一度帰省して妊娠検査を受けなければならない」と義務付けている超強権役所もあるみたいですが(笑)
そんな訳で農村部では戸籍に登録されていない(特に女の子)は少なからず存在しています。もちろん人として生活しているのですから、(裏でこっそり処分されない限り)いつかバレます。例えば子供が就学年齢に達した場合などですね。入学には戸籍が必要になるので、この時点で戸籍登録します。
知り合いのケースですが、身分証明書を更新するために田舎に帰ったら、「就学する子供の戸籍登録作業をしているから、しばらくの間は身分証明書に関する業務は停止だ」と言われたそうです。その「しばらくの間」がどれぐらいの期間になるのか不明wなのが如何にも中国的なお役所仕事なのですが、これは一日や二日で終わらない、まとまった数が戸籍から漏れていることも意味しています。田舎はこんなものなのです。
戸籍に関して言えば逆のケースも存在します。死亡しているのに死亡していない事になっているケースです。死者の年金を継続して受領するため、亡くなっても届け出ないこともあります。年金の不正受給を阻止するため年金受給には本人の生存確認が必須、ということで、寝たきり老人の生存確認にインターネットのビデオチャットを利用したという事例もあります。
死亡による増減に関してはこれまた逆のケースもあります。生きているのに戸籍上は死んでいることになっていた、という例です。以下実話。
ある高齢のおばあちゃんが年金受領のために担当の窓口を訪れました。しかし窓口で「生存証明書がなければ年金は支給できない」と言われてしまいます。身分証明書は何のためにあるのか聞きたくなりますが、生きていることも役所で証明してもらわなければならないようです。
そこでやむなく「生存証明書」を発行してもらうため戸籍管理窓口に出向きますが、そこでこのおばあちゃん、驚愕の事実を知ることになります。戸籍上自分は死亡していたのです。アイヨーということで担当者を問いただしたおばあちゃん。ここでもう一つ驚愕の事実を知らされます。担当者曰く……「死亡者数ノルマを達成するため、死んだことにした」んだそうですw
そんなこんなの理由で、実際の総人口数は中国の当局もわかっていません。だから中国の人口は13億と「神のみぞ知るプラスα」なのです。